探偵バトラー ~英国紳士と執事~

「覚えていてくれて光栄だよ。レディ・エリ。
そちらの美しい紳士は君のナイトかい?」

 ろしゅつきょうと呼ばれても、その紳士の笑みは変わらなかった。

 むしろ、いっそう嬉しそうに見えたのは、オレの勘違いだと思いたい。

 ともあれ、自己紹介がまだだった。

ナイト、というのはイギリスでは貴族階級の一種だが、この場合は主君、とりわけ貴婦人に仕える者を指しているのだろう。

「申し遅れました。私、絵理様の執事を勤めております、草薙陣と申します」

 失礼のないように、紳士に向かって恭しくお辞儀をした。

 紳士はそんなオレを見てにこやかに笑い、姿勢を正して自己紹介をした。

「これはご丁寧に。私の名はオースティン・L・ロシュツ。

 ミツルギとは学生時代からの付き合いでね。
こうして日本を訪れた時には、何かと世話になっているのだよ」

 オースティン。

 確かラテン語起源の名前で、『偉大なる』という意味があったように思う。

 ということは、彼は偉大なる露出狂。……いかん。オレは何を考えてるんだ。