探偵バトラー ~英国紳士と執事~

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 空港で出迎えた人物は、『英国紳士』という言葉をそのまま擬人化したような姿だった。

 高級そうなスーツをごく自然に着こなし、手にはステッキ。前髪を少し残してオールバックにした銀髪に、きれいに揃えられた口髭。

 すらりと引き締まった体躯に長い脚。洗練された身のこなし。年の頃は四十代半ば程だろうか。

 ダンディズムをそのまま体現したようなその紳士は、顔立ちも彫刻のように整っていた。

「久しぶりだねミツルギ。レディ・エリも随分と美しくなった」

 やわらかい笑みを浮かべ、流暢な日本語で挨拶を交わす。レディと呼ばれた絵理は、恭しく紳士にお辞儀をした。

「お久しぶりです。ロシュツ卿」

 ろしゅつきょう。露出狂。

 彼の名前を聞いたとたん、頭の中で変態的な性癖の一種が思い浮かび、慌ててそれを打ち消した。