探偵バトラー ~英国紳士と執事~

「……失礼しました」

 興奮しているのはむしろお前らだろうと言いたくなるのを飲み込み、極めて大人の対応を取った。

 オレが大人しくなったのを確認し、ロシュツ卿は話を再開する。

「話を元に戻そう。その『伝導こけし』は他の魔除けのこけしを探すためのレーダーの役割をしてくれるらしい。世界中の貴族や富豪の元を渡り歩き、現在は日本にあるということは解っている。伝導こけしさえ見つけてしまえば、他の魔除けのこけしを探すことも容易になるだろうね」

 もはやどこからどう突っ込んでいいのか解らない。伝説の魔除けのこけしなんていうふざけたものが一つじゃなかったのも驚きだが、レーダーってなんだよレーダーって。酔っ払いの与太話のほうがまだ現実味があるぞ。

「話から察するに『伝導こけし』は日本の富裕層が所持している可能性が高いということか」

「イエス。プロの探偵(ディテクティヴ)に頼む事も考えたのだが、上流階級の人間が所持している可能性が高い以上、君たちの持っているコネクションをたどっていった方が容易なのではないかと思ってね」

 優雅に紅茶を啜るロシュツ卿を見て、絵理は「ふむ」と考え込んだ。