探偵バトラー ~英国紳士と執事~

「ははは。ミツルギが直々に私の世話役に指名するくらいだ。有能なのは解っているよ。柔軟さと度胸も持ち合わせている、というのもね」

 ロシュツ卿は言い淀む絵理に明るく答え、オレに向かって意味ありげにウィンクした。

 べた褒めされすぎて聞いているこっちが照れくさいが、引っかかる単語が一つ。

 度胸って、執事やるのに関係があるのか?

「そんなに高い評価をいただける実力が私にあるかどうかは判りませんが、できる範囲でなら全力は尽くさせて頂きます」

 オレはあくまで使用人。謙虚に礼儀正しく。

 頭の中でひたすらその呪文を唱えながらでないとこのカオスでシュールな光景に呑まれてしまう。

 言動は極めて紳士だが、この人今赤ビキニ一丁の素っ裸なんだぜ?

 服装とのギャップが激しすぎる。その事についてまったく言及しない絵理もどうかしていると思うのは、オレがしがない小市民だからだろうか。

 これからしばらくの間、変態紳士の世話係をしなければならないとなると先が思いやられる。執事としての仮面を徹底的に被ってやり過ごそうそうしよう。