探偵バトラー ~英国紳士と執事~

 絵理はそんなロシュツ卿の様子を見て嬉しそうだ。

 くそう、人の気も知らないで。

「車で移動している間中、レディ・エリはずっと君の話ばかりしていたよ。年甲斐もなく妬いてしまいそうな位にね。いや、若人の惚気話は初々しくていい」

 え。

「別に惚気ていたわけでは。私はただ陣の人となりを知っておいて貰ったほうが後々のためになるかと思い……」

 絵理は困惑しながらもやや頬が紅潮している。

 そう言われてみれば、車内でミラー越しに表情は見えたが、何を話しているのかまでははっきり聞こえてこなかった。

 よもや自分が話のネタにされていたなんて全く考えていなかったわけで。

 事情が解ってしまったら、勝手にイラついていた自分がひどく滑稽に思えたと同時に、恥ずかしくなった。

「それに、彼は年こそ若いしまだ学生のため見習いだが、他人の機微を読んでサポートする能力は群を抜いている。それでいて私が至らぬところは助言や苦言も呈してくれるし、だから、その」