優しい日々を彼と過ごした。
いつも、あたしを近くで見守ってくれた。
ねえ、いつからだろう。あなたがあたしの特別になったのは。
ごめん。気がつくのが遅かったね。
ずっと、あなたが好きでした。

首を横へ振った。
彼が殺されてしまうくらいなら、独りで消えてしまった方がどんなにいいか。
「伸彦、あたしは行かない。」
「美都‼」
伸彦は、美都の肩を強く掴んだ。
「分かってるのか‼このままだと、殺されるんだぞ‼」
「あたしは伸彦を憎んでいるわ。生贄にするためにあたしを拾ってきて、ずっと嘘をついてきたのよ。」
「違う‼生贄にするためなんかじゃなかった‼」
彼の苦しみに歪んだ顔を見て思った。
来てくれて、ありがとう。
でも、あなたの命はもっと大切に使って。
あたしの分も、強く生きて……。
「出て行って。あなたの顔なんか見たくないわ。」