それは、あまりにも突然の事だった。
「これは…?」
部屋に、純白の着物や色とりどりのかんざしに紅などが所せましと置かれていた。
「誰かがお嫁にでも行くみたいね…。」
しかし、何事だろう。
沙希の見合いでもあるのであろうか。
廊下を歩きながら、考えていると、人にぶつかってしまった。
「ごめんなさい…。」
顔をあげるとぶつかった相手は普段見かけない人間だった。
「どなたですか?」
「田上の家の者です。」
…目を逸らされたような気がした。
「そうですか、どんなご用事で?」
「長に、少しご相談がありまして…」
「そうなのですか。」
何かはっきりしないものを抱えながら、その場を離れて沙希の自室へと向かった。
ふすまを開けると、泣き声が聞こえた。