顔から血の気が引くのを感じた。
「何だって?」
「ですから言ったでしょう。これしかもう我々には残された手段はないと。」
「他に………出来ることはないのか!!」
「俺らだって、やることはやったんだ!!お前だって知ってるだろう!!」
気が付くと、仲間に体を押さえられていた。
目の前に、大の男が転がっている。
不穏な空気の原因が自分にあることを察すると、伸彦は、小屋の扉を開け、暗闇の中を走り抜けた。
方向など、全く考えなかった。ただ、自らの感情のままに動いた。
汗だろうか、涙だろうか、塩辛いものが舌の先に触れた。
月も見えぬ闇の中、ひたすら疾走した。
足が、もつれた。
体が、地面に叩きつけられる。
水の干上がった川の中、砂利を握りしめて伸彦は黙って泣いた。