『さくら』




心臓が音を立てて、反応する。


不意にかかったその声に、一瞬はっとする。




その声、その呼び名。



嘘だ、と思って振り返る。




『な、なんで…』





立っていたのは、紛れもなく、あの、桜の王子。



涙が、込み上げてくる。



その温かな胸に飛び込みたくて、たまらない。





『さくらこそ、なんで?』




なんで?と問いつつも、嬉しそうに、柔らかく微笑んだ。


私の存在を、喜んでいるかのように。




『た、拓に…』



────会いたかったのよ。


そう言いたくても、言葉にならない。




そうしているうちに、拓が傍に寄って来ていた。



『た、拓?どうした─…』



『お願い』




あ、と思った時には、強く抱きしめられる。


たまらなく苦しい。



なんだか、切なくて。