【短編】空より広く、海より深く

急いで家に戻ろうとして
ふと足を止める。

「あがってく?」

門倉はしばらく考えていたが
お線香をあげたいと
みのりに続いて玄関を入った。


「お父さん
友達がお線香あげたいって」

今まで縁側にいたのに
玄関から入ってきた娘に
父は不思議そうな顔をした。

「すみません
こんな格好なんですが」

顔を出したのが
男性だったことに
さらに目を丸くしていた。

「どうぞ、入ってください」

仏間に入っていく門倉を
横目で見ながら
みのりは急ぎ足で
2階に上がった。