階段の下に見慣れた人を
見つけてみのりはドキッとする。

この風景に置いてきたはずの人。

「…あ、樹。危ない」

階段を這い下りようとする
子供に慌てて手を伸ばす。

門倉もそれに気づいて
階段を上がってきた。

みのりは自分の顔が
熱くなるのを感じた。
樹を抱きあげながら顔をそらす。

こんなところで会うなんて。

よかった
化粧をきちんとしていて。
服は普段着だけど…

ぐちゃぐちゃ考えていると
門倉がすぐ横まで上がってきた。

「引越したって聞いたけど」

すれ違いざまに言って
そのまま階段を上がりきり
広場へと歩いていく。

見慣れない服を着た
門倉の後ろ姿をみのりは
目で追った。