書籍化されない作品



自分の作品をもう一度見直せと言われた気がした


読まれない何かがそこには潜んでいるからと、裏を返せば彼のセリフはそれだろう


良い作品ならば、必ず世に出る


出ないならば、結局その作品は『それまで』の物だとまた次に生かせばいい


常に飛躍を


作家として彼は最高の成長をしていくのではないかと思った


「聞かせてあげたいわね、そのセリフ」


「いずれはその友人も気づくんじゃないかな。だって、俺も昔そうだったから」


「え……?」


「昔の俺も、どうして俺の作品が選ばれず、こんな作品を選ぶんだとイラついた時もあったけど。

今になって読み返したんだその作品」


苦笑に、照れ隠しを交えたような顔で彼は昔話を一つした


「いや、本当に恥ずかしい作品だった。見た瞬間に消してしまったよ。今でも未熟なのに、それ以上に未熟すぎる作品だからね。

書籍化して世に出回らなくて良かったとも思っているよ」