「彼女がいるなんて聞いてない!!」
わぁっ!と両手で顔を覆って泣くと、忍の「は?」と言う間抜けな声。
「彼女? 俺に? いねぇよ」
「好きな人がいるなんて聞いてなぃぃぃい!」
「お前何言ってんの? もしかして瑠雨のことか?」
「それ以外誰がいるのよ!」
「瑠雨は俺のクラスの問題児」
「問題児が好きなの!?」
泣きっ面のまま顔を上げると、あたしの涙はすぐに引っ込んだ。
忍が可笑しそうに、くしゃっとした顔で笑ってたから。
「お前の頭ん中、やばくね?」
……心臓の方がヤバいわ。
そんな突然、可愛い笑顔を見せるなんて……反則。
「会長のクラスに不登校気味のやつがいるなんて有り得なくね? ただでさえ透っつー問題児がいるだけで迷惑だっつーのに」
ハンッ!と鼻で嘲笑する忍にキュンとするあたし。
「……忍、優しいのね」
「何言ってんだ。俺のクラスは、俺の独裁で成り立つ運命なんだよ。つーか学校全体が俺の支配下?」
そんなこと言ってもあたし知ってるもの。忍が優しいことくらい。
「……優しいのはいいけど、あんまりあたし以外に優しくするのは嫌」
忍に向かって頬を膨らますと、また弱めのチョップを額にくらった。
反射的に瞑った瞼を開けると、忍は立ち上がってあたしを見下ろしている。



