「つかもう帰っから」
「「瑠雨っ!」」
忍ってばっ!!
「待て瑠雨ぅぅぅう!!!!」
「ぎゃー!! 来るなっつーのぉお!!」
走って逃げた瑠雨という人を全速力で追い掛けてく透ちゃん。
残されたのは「あれも名物だよね~」と呑気に笑うギャラリーと、不服そうな忍と、未だ地面に座るあたしと砂埃。
煙いわ。そして何だったのかしら。ていうか、あの瑠雨って人……。
『コイツは俺の』
まさか忍の彼女!?
バッと勢い良く忍を見上げると、忍は何かブツクサ言っている。唖然とするあたしは、忍から目を逸らすことが出来ない。
嘘でしょ忍。
彼女いるなんて聞いてないわよ。
「……彼女いたの?」
微かに聞こえたのか、忍はやっとあたしと視線を合わせた。
「いつまで座ってんだお前。早く立てば?」
あたしのハート、粉砕。
「――は? おい、何で?」
ポロポロと落ちる涙を見て、忍は驚いたのかあたしの目線に合わせてしゃがみ込んだ。



