「まあ俺のドリブルテクには忍もかなわねぇけどな!」
心底どうでもいい情報は0.5秒で忘れる。
ひとりで喋ってる湊磨くんを無視していると、試合の終わりを告げるブザーが鳴った。
「忍ーーー! 素敵! 王子様!」
「ぐふっ!」
試合が終わり、体育館の真ん中で大聖先輩と話していた忍の背中に突っ込むと、程なくしてガッ!と頭を掴まれた。
「お前は俺を殺したいのか」
「王子様への愛の表現方法。素敵でしょ?」
「闘牛並みの突進が愛? 憎しみしか感じられねーわ」
ヒドい!
「王子様はシンデレラにそんなこと言わないわ!」
「俺まだ苺の王子様じゃなくね? 仮じゃね? 仮」
「その喋り方……好き」
ポッと頬を染めると、忍は返す言葉がないみたい。
言葉が出ないくらい照れてるのね!?
「!」
「もう早く飲みもん買ってこい」
いつもより弱いチョップをされて、あたしは額を押さえながら忍の背中を見つめた。
きゅん……ってしてる場合じゃない! 飲み物飲み物! 忍とその他の飲み物っ!
握っていたお札を確認して、ギャラリーの多い出入り口に向かう。
試合中、大聖とか湊磨とか叫んでいた女子たちの脇を通り抜けた時、思わず振り返ってしまった。



