逆転暴走シンデレラ



「試合後の忍は喉乾いたって言うんだけど、今日は我慢してもらうか~」

「買ってくるに決まってるじゃない!」


お金を奪って立ち上がれば、湊磨くんは「悪いね~」とニヤニヤしていた。ホントうっとうしいことこの上ない。


手に持った3千円からチラリとコートへ視線を映すと、忍を含む男子バスケ部がチーム戦をしてる最中。


「ディフェンス脆いぞ!」
「パスパス! 戻れ!」

バッシュの音と、ドリブルの音。バスケのことはよく分からないけど、バスケをしてる忍はカッコいい。そりゃもう惚れ直すくらい。


「――お。忍の十八番」


視界に入らないでほしい湊磨くんが言うと、忍がボールを持って構えた。


え……。あの距離から……?


忍のバッシュが床から浮いて、長い手からボールが放たれる。


ボールが綺麗な弧を描いてゴールに入った瞬間、忍はさも当たり前のように口の端を上げていた。


「いつ見ても神業だなー……」


憧れるように溜め息をつく湊磨くん。あたしはポケーッと忍を見つめたまま。


「すげぇだろ忍。男バスのエースは大聖だけど、スリーポイントの上手さは忍が1番だから、試合中の要なんだぜ?」

「……素敵。スゴい綺麗だった」


ほんとに、言葉を失うくらい。バスケといいスケボーといい、忍は何をやっても様になる。


さすが王子様…!