「もう1回抱き付いていい?」
「聞いてた? なぁ俺の話聞いてた?」
「聞いてたわよ?」
「はぁ……もういいわ。苺さ、お前部活入ってねぇだろ」
バサッと机に何枚かプリントを出して、忍は眼鏡をかけた。
きゅん……と締め付けられる胸の奥が心地いい。
忍に深緑の縁眼鏡って本当によく合う。レンズの奥の瞳が、プリントからあたしに視線を移すと、否応なしに胸が高鳴る。
ねえそれ、萌? あたしのこと萌死させたいの?
「……本望ーーっっ! でも忍が王子様になってからよっ!」
「妄想してんじゃねぇドアホッ!」
本日二度目の愛のチョップをくらって、若干フラフラのあたし。
何よもう! 部活が何!?
「入ってるわよっ」
「はん? 届け出てなくね? 何部入ってんだよ」
「しの部」
「……寒くね? それはなくね? 今俺本気で凍死するかと思った」
しの部は忍をストーカ……観察する立派な部活っ!って、ちょっと。
「何笑ってるのよ!」
声を出さずに体中を震わせて、涙目であたしを指差す湊磨くんを睨む。
「しっ…しっ…しのブフーッ!」
召されればいいのに。魔女に内蔵取られて森に捨てられればいいのに。



