「置いてくなら声掛けないでよ! 置いてく気がないなら帰ろうって言ってよ!」

「は? わがままじゃね?」


嘘だと言って王子様。あたしのどこがわがままなのよ!


「一緒帰りてぇならお前が言うべきじゃね?」

「王子様から言うでしょ普通!」

「俺とお前は、逆じゃん」


2メートルほど離れた場所で、忍はズボンのポケットに手を突っ込んでいる。妖しく、口の端を上げながら。


……ぎゃ、く?


「俺のこと落とすんだろ?」

「……うん」

「ならお前から言うのが、普通じゃね?」


……忍は、王子様になってほしいなら落とせばいいって言った。


あの日、空から降りてきたあの日に、笑ってそう言った。


「……あたしのこと、嫌いじゃない?」

「別に普通」


「つか嫌いな奴はフルシカトじゃね?」と、さも当たり前のように言う忍に、涙腺が緩みそうになった。


「……頑張ったら、王子様になってくれる?」


問い掛けたあたしを、忍は見つめてくる。思わず、顔を背けたくなるほど真っ直ぐに。