「おい」
ショックを受けてるあたしの目には、廊下に出た忍の姿。
なに? これ。おかしくない? あたし、忍に帰るぞって言われなかったわよ? 夢? これ夢?
「うおいっ!」
「はいっ!?」
ビクッと体を揺らして現実に戻ると、忍は廊下に出たままで尚更ガッカリする。
「鍵閉められねえだろ。早く出ろ」
はいはいはいはい。出るわよ帰るわよ帰ればいいんでしょ帰りますよ。
「フンッ!」
足音荒く廊下に出ると、忍は両開きのドアを閉めて鍵を差し込んだ。その姿を見ながらあたしは落ち込んで、少しだけ期待をする。
一緒に帰ってくれないの? 一緒に帰ろうって言ってくれる?
――ガチャンと、冷たい金属音が廊下に響いた。
チャリ…と金属音の擦れる音がして、忍は鍵をポケットに突っ込んで歩き出す。
言ってくれないの!?
呆然と忍の後ろ姿を見つめていると、華奢な背中が振り返った。
「何固まってんだよ」
「なんなの!?」
「何キレてんの? おかしくね? 俺キレられるようなことしてなくね?」
してるわよ! さっきから! 何度も何度も何度も!!!



