「ほらどけ」
額を押さえたまま涙目で睨むと、忍は眉を寄せる。
「スカート汚れんぞ」
どきます今すぐに!
俊敏に立ち上がると、忍も立ち上がってズボンの後ろをはたいた。
ああ……そのお尻あたしも触っていい? なんて、思ってないない。微塵も思ってないわよ。思ってないってば。
そんなことより、スカート汚れんぞ。ですって! 優しい、素敵! さすがあたしの王子様!
この溢れる想いどうすれば伝わる!?
「忍、……きゅん」
きゅん。て、するわ。
「は?9?」
違う!
「6時か。……何梅干しスッペーって顔してんだお前」
きゅん!をどう表現しようか試行錯誤してたあたしを見て、忍は「変な奴」と言い残してドアに向かう。
梅干しスッペーって顔!? 違うわよきゅん!って顔よ! じゃなくて何勝手に帰ろうとしてるのよ!
「忍っ!」
一際大きい声を出すと、忍はドアに掛けた手を止めて振り向く。



