「駅で王子様って……白馬じゃなくて電車でいいんだ」


隣を歩きながらボソッと呟くのは10年来の幼なじみ、向井 陛(むかい のぼる)。


愛称は“のん”。緩いパーマをあてた黒髪。高1にして175センチある身長に、男にしては愛らしい顔。


かっこいいと言うよりも可愛いと言うほうがピッタリで、それはそれはモテる。


王子様が現れない原因のひとつとして、あたしの隣には常にのんがいるからだと思うの。


こんなキラッキラした幼なじみがいるから、あたしのキラキラが霞むの!



「あたしのシンデレラオーラ返して!」

「元々ないよ?」


なんてこと言うの!


「もうさ、諦めなよ。入学して一週間だよ? 学校に王子様はいないよ」

「一週間で人間の何が分かるのよ!」


のんは心底呆れたような瞳であたしを見て、「やれやれ」と首を左右に振った。



なによ! 分からないじゃない! もしかしたら今日、出逢えるかもしれないじゃない。


今まさに遅刻してるあたしとのんだけど! のんびり歩いてるけど!


走って学校に向かったら人にぶつかっちゃって、転んで、見上げたらイケメンで……。