「じゃあな。もう絡まれんなよ」
気付いた時にはもう忍は目の前にいなくて、慌てて人混みに目を配ると、なめらかに、嘲笑うかのように人を避けて進んで行く背中。
まるでスケボーが忍に夢中みたい。
きっと、真っ赤になってるあたしも。
構ってほしい。笑い掛けてほしい。触れてほしい。
そんな欲と共に胸の熱さは顔の熱に変わり、バクバクと鳴る心臓を服の上からギュッと握り締めた。
「ああ、もう……」
何なの、この尋常じゃない胸の高鳴りは。
王子様って、あんなに余裕綽々なものなの?
悔しい。でもその何倍も嬉しい。やっと見つけた。あたしにとって、最高の王子様。
「振り向かせてあげるわよ」
忍が消えた人混みを見つめて、ポツリと呟いた。
小森 苺 15歳。
念願の王子様、発見。
明日から、猛アタック開始よ!