見上げた空に、息をのんだ。


歩道橋の階段からずっとずっと上。


――ダンッ!と大きな音を立てて、宙に浮いていた“彼”は突風と共に地面に降り立った。


「…………っ」


歩道橋を見上げているあたしの少し後ろに着地した“彼”の気配に、バクバクと心臓が鳴る。




「何絡まれてんだよ、チビ」

「なな何だよお前っ! どっから飛んできた!? 危ねぇだろ!!」


いつの間にか尻餅をついていたネズミさんを、“彼”は眉を寄せて見下ろすと、スケボーから降りた。


「ふんっ!」

――バゴンッ!


“彼”はスケボーの端を思いっきり踏んで、シーソーの要領でスケボーをネズミさんの顎にヒットさせる。


……気絶、した?


「俺の学校の生徒に絡むなんて、命知らずな奴じゃね?」

「………」


ドキン、ドキン、と鼓動が早く大きくなっていく。


街頭に照らされた癖のない明るい茶髪。さほど着崩してない制服に、スケボー。



生徒会長、湯本 忍。


あなたが、“彼”だったのね?