「……苺。あのさ、すごく言いづらいんだけどね? 顔が怖い」
ズバッと言っといて何が『すごく言いづらい』よ。
軽く睨むと、隣に立つ幼なじみは呆れたように溜め息をついた。
「王子様探しも大概にしときなよ」
あたしの日課に水を差すような言葉は、高校に入学しても続ける気らしい。
「あたしが尊敬する人が誰だか分かってる!?」
「耳にタコが出来るほど聞かされてるよ」
尊敬する人はシンデレラ。
目指す人はシンデレラ。
ていうかあたしがシンデレラ。
夢はもちろん王子様と結婚。
電波だなんてバカにしないで。大概にしとけなんて冗談じゃない。あたしは本気なの。
心の底から本気で、行方不明の王子様を探してるんだからっ。
そりゃもう血眼になって!
だけどなかなか現れないのが、現実。
「あたしの王子様は一体全体どこにいるの?」
駅構内を歩きながら王子様を探していたあたしは、人混みから視線をはずして眉を下げる。