「お前は自分がどんだけ可愛いか気付くべきじゃね?」
キョトンとするあたしを見て、忍は「あー、クソ」と、悔しそう。
「歯、浮く」
イーッと、歯を噛み締める忍の頬が少し赤い。嬉しくて、幸せで、笑ってしまった。
ねえ、忍。照れ屋なのは結構だけど、たまには言ってくれなきゃ嫌よ?
あたしは毎日毎日、好きだと言うから。忍もたまには好きだと、遠まわしでもいいから、言ってね?
「ああもういいわ。帰んぞアホ苺」
立ちあがった忍は両手をポケットに突っ込んで、あたしもそれを見ながら立ちあがる。足でスケボーを引き寄せる忍に、質問。
「ねえ忍」
「はん?」
「ポケットに何隠してるの?」
ゴホッ!と咳き込んだ忍に、口の端が上がる自分に気付く。
オッサンが言ってたの。忍の、もうひとつの癖。
“忍、ポケットに手を突っ込む癖があるのよ。それは、何か隠し事がある人がよくやるんですって。気持ちか、物かは分からないけど。思い当たる節があるでしょう?”
そう言っていた。思い当たる節なんて、いくらでもある。
少しはあたしに惹かれてるでしょう?と聞いた時も、引く作戦をやめろと言ってきた時も、透ちゃんを好きだとあたしにバレた時も。
もうやめだ、とあたしに告げた時も。隠していた透ちゃんへの想いを話してくれた時も。借り物競走で、透ちゃんを連れていこうとした時も。
忍はいつも、ポケットに手を突っ込んでいた。



