少し、焦った顔をして。背に、月の光を浴びて。
照らされる癖のない髪が揺れて、吸い込まれてしまいたいと願うほど綺麗な奥二重が、あたしを見下ろしていた。
まるで魔法にかけられたみたいに、言葉が出ない。
力なく携帯を耳から離すと、忍はあの日と同じように、腰を抜かしていたネズミさんの顎にスケボーをヒットさせた。
ドキドキとうるさい心臓。
本当に、あの日みたい。忍に助けられた、あの日。
あたしは、忍を王子様にすると決めた。
「このドアホッ!」
ゴッ!と、見事に額に食らったチョップは多分今までで1番痛い。思わず叫ぶほど。
「いったぁぁあい! 何するのよーっ!」
「何でひとりなんだよ! ひとりで帰るなって言っただろーがアホか!」
「ひとりじゃなかったわよ! -mia-に行くまでは!」
「俺は寄り道について言ってんじゃねぇよ! 家に帰るまでを言ってんだよ!」
「忍に会いたかったから抜け出してきたんじゃないの!」
「微塵も嬉しくねえよっ」
ヒドすぎる!!
ショックを受けていると、忍は大きく溜め息をついてしゃがみ込んだ。
何よ、嬉しくないって。彼女が会いたいと思ってくれて嬉しくならないなんて……じゃあ忍は何だったら喜ぶのよ。
ムスッとした表情で忍を見下ろすと、また溜め息をつかれた。



