「おいコラ! ガンくれてんじゃねぇぞ!」
「!」
あたしの胸ぐらを掴もうとしたネズミさんの手をサッと避けて、あたしは鳴り響いた携帯を取り出す。
「忍っ! もしもし!」
『やっぱ苺か』
急いで電話に出ると、初めての電話越しの忍の声。きゅんとするなと言うほうが、無理に決まってる。
「おいお前! 何フツーに電話に出てんだよ!」
「うるっさいわね、ちょっと黙ってなさい!」
『……何してんの?』
ネズミさんに威嚇していると忍の不審そうな声と、スケボーに乗ってるのか、ガラガラとコンクリートを擦る音が微かに聞こえた。
「気にしないで。ちょっと前に歩道橋でぶつかった人にまたぶつかっただけよ」
『いや、またってお前、アホじゃね? 前見て歩け、前』
「ところで今どこにいるの?」
「おい! いい加減にしろよ!!」
ガッと胸ぐらを掴まれて、あたしは驚きから目を見開く。
『「――苺っ!」』
携帯と、どこからか聞こえた忍の声。分かっていたのに、歩道橋を見上げてしまった。
階段をふたつに別つ手すりを、スケボーに乗って降下してくる忍。
目を奪われてるうちに、忍はスケボーに乗ったままジャンプして、あたしの目の前に豪快な音を立てて着地した。



