「ふふ、これは言っていいのかしら? 忍」


え?


顔を上げても、忍の姿はなくて。振り向くと、数メートル離れた場所に忍が立っていた。


「しの……わっ!」


近づいてきた忍は、無理やりあたしの手首を掴んで立ちあがらせた。見上げると、不機嫌な顔。


「言いたきゃ言えば良くね? 翔太先輩とのマル秘映像を、透たちに見せてもいいならな?」

「え! なんやそれ! 俺は大歓迎やで!」

「バカじゃないの。翔太、ハウス」

「犬扱いすなぁぁあ!!」


忍は鼻で笑い、あたしの弁当を持って、手首を引いたまま歩き出す。


「ちょ、何よ忍っ」


手を繋ぎたいなら、そう言ってよ! これじゃあ連れさられてるみた……。


「かけおち?」


ポッと頬を染めると、忍は立ち止まって「誰と誰が?」と言って手首を離した。


「……」


んふふ。あたし、めげない。


ていうか、違うなら何であたしを連れだしたのよ!


「お、苺じゃ~ん。何、また私服かよ」

「……ケンカでもしたの?」


忍が向かった先には、湊磨くんと大聖先輩が並んで座っていた。とりあえず忍が座った席の隣に腰かけたけど、無言。


だって、忍が何でか知らないけど怒ってるんだもの。