「結婚なんてまだ早いわよ!」

「いやそれ親呼び出しの書類」

「親の前でプロポーズゥウ!?」

「お前を私服で学校来させんなって、注意……」


会長室でひとり、きゃーっ!と盛り上がるあたしに忍は婚姻届を真っ二つに引き裂いた。


「きゃー! 婚姻届がぁぁあ!」

「自宅に電話でいいか」


小さく小さく千切られてく婚姻届は、ごみ箱に捨てられていく。


ああ……あたしと忍の婚姻届が……。


「いいもんね! 持ってるから!」

「このドアホがっ!」


勢い良く忍の目の前に婚姻届をつき付けると、そのまま豪快なチョップを食らった。顔に張り付いた婚姻届を退かすなり、忍は溜め息をつく。


「呼び出した俺がバカだった」


やれやれ、と言いながらドアに向かう忍。その後ろから抱き付くと、忍は足を止める。


「歩きづらいんですが」

「じゃあ抱っこして」


そう言うと、忍は顔だけで振り向いてあたしを見下ろす。ジッと見られて、自分で頬が染まるのが分かった。


「それ召使いの役目じゃね?」

「えー……」


王 子 様 の 役 目 は ?


ショックを受けるあたしを置いて、忍はスタスタと会長室を出ていく。


甘い日々は? ねぇ甘い日々は?


体育祭が終わってからもう2日経ってますけどあたし何もされてないんですけどていうか公開告白しといてそれはないでしょ何でなの忍ねぇどうしてなの忍。