「ばっ! 危ねぇって、あぁ……」
諦めた表情の忍に勢い良く抱き付くと、ゴツッ!と懐かしい音。
「……イテェよ、土カテェよ。つか俺、石頭じゃね?」
そんなことはどうでもいいのよ。王子様が石頭なんて、ちょっとイメージしたくないわ。
「まず離れるべきじゃね?」
抱き付いたままでいると、忍はそのまま上半身を起こした。でも、離れてなんかあげないんだから。
「離れないと、それ没収」
その言葉に勢い良く離れると目の前に、忍の癖。声を出さずに笑う、王子様。
「……ずるいわ」
「はん? 何がだよ」
「迎えに行くタイプじゃないとか言って、こんなのって反則じゃない!」
「それ買うの、マジ恥ずかしかったんですけど」
だから余計に嬉しかったのよ。あたしがしてきたことが、無駄なんかじゃなかったって言われたみたいで。
忍が、ちゃんとあたしを分かってくれてたんだと思って。どうしようもなく、幸せなのよ。
「大事にしてあげるわよ……うぅっ」
「怒ってんのか嬉しいのかどっちだよ」
「何でそんなに偉そうなの!?」
「さあ。王子様だからじゃね?」
口の端を上げてあっさりと言う忍。悔しいけれど、幸せの方が大きい。
こんな偉そうな王子様なんて、忍以外いないわよ。シンデレラを迎えに来ないなんて、あり得ないわ。
でも、いいの。あたしは待っていられないから。ジッとなんて、出来ないから。
自分の足で、王子様のもとへ。