――あたしとのんだけの、秘密がある。
秘密と言うほど大袈裟ではなくて。だけど目を背けたくなる、過去の記憶。
それほど傷付いたわけじゃなかった。苦しくて、辛くて、泣いてばかりいたわけじゃなかった。
“王子様なんていない”
そう思った時期がある。
自分が世間一般からズレていることは分かっていた。頭がおかしいとか、電波でヤバいとか、言われ続けていたから。
今よりもっと小さい頃は声を掛けてくれる子もいたけれど、皆その内耐えきれずに離れていって。
それでもあたしは、これが自分だと変わらずにいた。
心の底からシンデレラに憧れて、大好きで。本気で王子様に出逢いたくて、恋がしたくて。
自分を偽って曲げる様なことはしなかった。したくなかった。
だけどやっぱり現実は、夢見るほど優しくはない。妄想ほど甘くもない。
王子様と口にする度バカにされて、王子様かもしれないと感じた人はいつも違って……。
少し自信を失くしていた中学2年生の春、先輩に呼び出された。
あたしが王子様かもしれないと追いかけていた人を、先輩も好きで。ついでにのんを狙う他の先輩たちもいて。
もうほとんど覚えていないけれど、嫌な気持ちになる言葉をたくさん言われた。突き飛ばされて、膝を擦りむいたりもした。
言い返して反撃だってしたけれど、本音はすごく、悲しかった。少しだけ、怖かった。
“王子様なんて、いないのかも……”
あの瞬間だけは、ハッキリと覚えてる。
助けに来てくれたのんに初めて怒られたあと、ぽつりと零れた言葉。
自分を曲げたくないあたしが初めて口にした、迷いの言葉。



