逆転暴走シンデレラ



「苺……見てみなよ」


そうのんが言って、あたしはもう一度忍を見つめた。真っ直ぐあたしを見つめる瞳に、ドキンと胸が高鳴る。


恐る恐る右手を開くと、フワフワの正体は、ピンク色の小さいファーだった。


その横に付いてるチャームが、あたしの心を大きく揺さぶったけれど。


「はは。やるね、忍くんも」


一緒に覗いたのんが言うと、燈磨がのんの肩を抱いて、あたしの額を小突く。


「泣くんじゃねぇよ。早く行け」

「……っ」


でも、だって……。


涙が溜まった瞳でのんを見上げると、のんはあたしの頭を撫でた。びっくりするほど優しく、なめらかに。


「行っといで、苺」


ぎゅっと再び握った掌に、今度は堅い感触。その手で口元を覆って、目を伏せた。


どうしても、言いたいことがあって。そのわがままを、口にしたいのに涙が邪魔をする。


でも、あたしの幼なじみはいつも、先回りしていることを忘れていた。


「俺は苺から、離れたりしないよ」


流れ落ちた涙を見て、燈磨はわざとらしく溜め息をつく。


「のんが嘘付いたことあるか?」


あるじゃない。めちゃくちゃあるわよ。


でも、信じられる。のんが言う言葉は、いつもあたしを救ってくれたもの。