「……相変わらず透の近くにいて、バカやって。12月に奈々と翔太先輩が付き合ったって嬉しそうに話す透を見て、あの5人は一生離れねぇんだと思った」
「割り込む気なんてサラサラなかったし」そう言う、そう思っていた当時の忍は、どれだけ我慢したんだろう。
「冬休み明けに湊磨が転校してきて、透と湊磨すげぇ仲良くなってさ。その頃色々あって、透が昴先輩のこと意識しすぎて避けてたんだよ。んで……昴先輩が湊磨に透盗られるとか、なんか修羅場って。とりあえずそのあと目の前でいちゃつかれたり」
――ワァッ!と生徒の歓声が響いて、思わずふたりで窓を見てしまった。
四角い窓から見える体育祭の風景。ぼんやりとそれを見つめる忍は、尚も過去を振り返る。
「バレンタイン過ぎてから、今度は昴の幼馴染みが出てきて。透ボロボロになって、すげぇ泣いてたんだけど、やっぱり俺は変わらずで」
「……忍にとって、透ちゃんってどんな存在なの?」
ヤキモチもやかない、傷つきも奪おうともしない。
話を聞いてると、本当に何もせず、ただ見てるだけだったように思う。
本当に、一度でも想いを告げようとは思わなかったの?
「ずっと笑っててほしい」
「そんなの綺麗ごとだわ……っ!」
分かってるわよ、そんなの。
人によって恋の仕方なんて違うけど、見てるだけでいいなんて、相手が幸せならそれでいいなんて、あたしには理解できない。
理解出来ないから苦しい。
理解出来ないからこそ、忍の想いが本気なんだと痛感して泣きたい。



