「苺の気持ちを利用してた。……透を、忘れるために」
「……」
最低だと、今でも思う。だけど今だからこそ、それでもいいと思う。
利用されてもいい。それだけじゃ終わらせないから。
「……聞きたい、忍の恋バナ」
「別に何も楽しい話じゃねぇけど」
「聞かせて?」
今あたしを見つめているその瞳。奥二重から覗く、宝石みたいな水晶体に映した透ちゃんの話を聞きたい。
「……透と初めて会ったのは、普通に入学式前の教室。その頃はアイツ金髪で、奈々と大聖と喋ってた。大聖が俺の前の席で、必然的に話すようになって、バスケっていう共通点もあったから仲良くなった」
「うん」
「俺もともと恋愛とか興味なかったから、透とも普通にダチで。ただ、今までの女友達の誰よりも馬が合うって、そんぐらいにしか思ってなかったんだよ」
あたしの知らない、1年前。忍を知らない、1年前。それを忍が話してくれてる。
今まで誰にも言わずにいた、秘めた想いを乗せて。
「で、ある日。普通に気付いた。大聖が、透を好きだってこと」
「……え? た、大聖先輩? だって今、彼女……」
いるわよね?と言えなかったのは、忍が笑ったから。声を出さずに笑う、見たかったはずの笑顔。
でもそれは、寂しい笑顔だった。困ったように笑う忍に、口を噤む。
「知らなかっただろ。突っ込んだら、ほぼ一目ぼれだとか言って。ウケね?」
……ウケない。全然、面白くない。



