「骨は折れてないから大丈夫。傷も浅いけど、化膿しちゃうかもしれないから、一応病院には行ってね」
大袈裟に手当をしてくれた保健医はそう言って、血の付いた脱脂綿などを片付け始めた。
「センセー! 転んだぁぁあ!」
「保健委員がいるでしょ!」
「センセー! 保健委員どっかいったー!」
「今行くから静かにしなさいっ」
保健医は生徒を追い出して、申し訳なさそうに椅子に座るあたしを見る。
「やっぱり校庭にいた方がいいみたい。小森さん、ちゃんと病院行くのよ?」
頷くと、保健医は慌ただしく出て行った。
一気に静寂を取り戻した保健室には、微かに聞こえる湊磨くんの実況と、ふたりきりの微妙な空気。
「……悪かったな。病院、付き合う」
……ん? 空耳?
きょろきょろと辺りを見渡すと、もう一度聞こえた謝罪の言葉。驚いて、忍を見る。
「しししし、忍って謝れたの!?」
「はん? 俺を何だと思ってんの?」
ゴーイングマイウェイ。とは言わないけど、何に謝ってるのかしら。
「怪我のことならいいわよ」
「良くねぇよ。俺の監督不行き届き」
眉間に深くシワをつくる忍に気にしないでと言っても、きっと責任感の強そうな忍は俺が気にするとか言うに決まってる。
少し考えて、思いついたように手を叩いた。



