ち……血ぃぃぃい! ヒィイイイイ!!
「うわっ! 苺! 保健室っ」
フラッとまた後ろに傾いた上体を支えてくれたのんに感謝する暇もなく、腕から流れ出た血から目が離せない。
無理ムリ無理ムリ! 血は無理! 血だけは勘弁してちょうだい!
泣きそうになった瞬間、突然目の前が暗くなったと思ったら体が浮いて、次に目の前に広がったのはいつもより目線の高い風景だった。
本能的にのんに抱きかかえられたと思ったのに、目に映ったのはパーマがかかった黒髪ではなくて、明るい、癖のない茶髪だった。
「手ぇ上げてろ」
「……っ!? や、やだ降ろして! 歩けるからって、ちょっと忍!」
騒ぐあたしを無視して、歩き始める忍。そのせいで、ギャラリーに見られていることに気付く。もちろん、駆け寄ってくれたのんと燈磨にも。
「し、忍ってば!」
「手ぇ下げんな。出来るだけ高く上げてろ」
肩を掴んで揺らしてみたものの、がっちりと回された腕は解かれる気配がない。
周りの視線を気にする様子もなく、あたしを抱きかかえて歩く忍。熱が、瞼に集まる。
「……血が、付いちゃうわよ」
「当たり前じゃね?」
「……ジャージ汚れちゃうじゃない」
「だから何だよ」
「……殺人犯みたいになっちゃうわよ」
「マジ黙るべきじゃね?」
忍の顔が見えなくて良かった。
……ねえ、もうひとつ聞いてもいい?
もしかして、1番に駆け寄ってくれた? のんと燈磨よりも、誰よりも早く、あたしに駆け寄ってくれたんでしょう?
なんて、嗚咽が出そうで聞けそうにないけれど。



