「俺はねぇよ」
パタン、と冷たい音が廊下に響き、廊下に取り残されたあたしはまたひとりぼっち。
閉ざされたドアに首を垂らして、大きく息を吸った。
「あたしはあるのよ!」
叫んだと同時にドアを開ける。革張りの椅子に座ろうとしていた忍は一瞬動きを止めて、すぐ腰掛けた。
「俺には関係なくね?」
机に置かれていた資料を淡々と広げる忍にあたしはドアを閉め、忍の目の前まで詰め寄る。
「関係あるわよ」
資料に落とされてた瞳が、間違いなくあたしだけに向けられる。久しぶりの感覚に、心臓がうるさい。
「俺は忙しいんだよ。エセ教師とアホ問題児のせいで」
それこそあたしには関係ないわ。なんて言ったら怒るんだろうけど……。
「じゃあ、仕事したまま聞いて」
「気が散る」
「少しだけだからっ」
「無理」
頑固!! もういいわよ!
「勝手に喋るから」
「ホント黙るべきじゃね?」
黙らないわよ。忍がどんなに嫌がったって、言わせてもらうわ。
「諦めないから。絶対絶対、諦めてなんかあげない」
「…………」
真っ直ぐ見つめて言ったあたしに、忍は目を伏せた。早まる鼓動が、乾く喉が、気持ちをせきたてる。



