「のん……。どうにかなりたいわけじゃないの。どうしても今、忍に会っておきたいの」

「うん。分かってるから、好きにしていいんだよ」

「ごめん……」

「謝ることないのに」


だって、どうしても気が引けるんだもの。


申し訳なさばかり募って、のんの顔がちゃんと見れない。


俯いてしまうと、「よいしょ」なんて言いながらのんが窓からベランダに足を下ろした。


そのまま隣にしゃがみ込んで、あたしの顔を覗いてくる。


ふわふわした黒髪から覗く、忍とは対照的な丸くて大きな瞳。


昔から変わらないそれは、いつも慈愛に満ちていた気がする。


「苺。したいようにしていいんだよ。俺も、そうするから」

「…………」

「苺が忍くんに会いにいかないなら、それはラッキーだと思うし、会いに行くって言うなら、止めたりしないよ。その分、俺は頑張るから」

「……ありがとう」


お礼を言う場面ではなかったかもしれないけど、言わずにはいられなかった。


……のんに頭撫でられるの、好きよ。この手を失うなんてやっぱり考えたくはないけど……後悔だけは、したくない。



「泣きそうになったら俺を呼んでね? つけ込むから」

「……意外に腹黒よね、のんって」


笑うのんに、笑い返した。


燈磨は好きにしろなんて言ったけど、分かってる。燈磨ものんと同じくらいに、あたしを心配してくれてること。


分かってるから、頑張ろう。


ダメでもまた、頑張る自分でいたいから。