「おい、何か話せや」
「翔太こそ」
「イ、イチゴ! たべる!? chocolate!」
昼休みが終わる間近。3年2組の教室の隅で、あたしはうずくまっていた。
きっと周りには、探しに来てくれたのであろう有名な3人組。ゆっくりと顔を上げると、やっぱり眉を下げてる3人。
「……いらない」
チョコレートを差しだす昴先輩に言うと、しゅん、と子犬が耳を垂らすみたいに肩を下げるリアル王子様。
ああ、重症だわ。こんな状況にキュンとしないなんて。
「苺、授業始まるで? 教室戻らな」
ヤンキー座りして宥めるように優しく笑う翔太先輩に、あたしはまた膝に顔を埋める。
「……戻れるわけないじゃない」
逃げたんだもの。
のんに告白されたのに、あたしは逃げてしまった。燈磨に名前を呼ばれても、のんが傷つくと分かっていても。
「最低だわ、あたし」
居場所がなくなってしまったかもしれない。あたしは、のんと燈磨がいなきゃ存在出来ないようなものなのに。
忍にまで拒絶されて、あたしは誰の隣にいればいいのよ。
「とにかくさ、一回のんと話したほうがいいんじゃない?」
キョウ先輩の言葉に顔を上げるけど、あたしは眉をひそめる。話すことなんて分からなかったから。