それから、長い、長い雨と共に、世界には常闇(トコヤミ)が産まれた。
 ずっと、このままでも良いと、スサノヲは地上への道すがらぼんやりと考える。

 皆に崇拝され頼られる姉は、自分のように好きに動く事は許されないのだ。
 そんな彼女が今、自分を追放したあと、ふさぎ込み姿を消しているらしい。
 これはこれでよかったのかもしれないと、やり切れない中で無理矢理出したスサノヲの想いだった。



 道程は長く、重い脚をただ呆と前に降ろす。
 雨が、スサノヲには姉の泣き声に聞こえ、痛む胸は涙を与えてはくれなかった。


 昏い地上に、点々と灯りが見える。
 消えた日の代わりに灯された火の近くで、川が流れている。上流まで続くそれをたいした考えもなく辿って行く。


 行った先には、娘を挟み泣く夫婦がいた。



泣いている…



 泣かないで欲しい。欲しかった。本当にあの人が泣いているのかなんて知る事は叶わなかったのに、そう思う。
 スサノヲは、ゆらりとその三人に近付いた。


 涙をとめなければと、思った。