「アマテラス……」





 タヂカラオの呟きにスサノヲをゆっくりと戸口に目をやる。
 そこには、アメノウズメとともに駆け付けたアマテラスが立ちすくんでいた。



 彼女の見開かれた目は血に沈む白い腕に釘付けになっている。
 衝撃的な喪失感か、その目は大きな哀しみに染まっている。




姉上はあんな愚劣な女が死んでも哀しいのだ――…




 やがて、その女神はスサノヲに今まで見せなかったような険しい顔を見せた。
 その瞳いっぱいに涙を溜めて、今にも声をあげて泣き出しそうなその震える口を開く。





嗚呼、違う。そうじゃなかったんだ―…




「…スサノヲ……」




 その声は思ったよりも強く、いつも通り透き通っている。



違う。ただ、ただ、貴女の笑顔が―…






「此処から…出てお行きなさい…!!」






貴女に喜んで欲しかった。だけだったんだ……