この揺れは、笑い…?……



 涙にくれていたアマテラスは、その揺れにふと我に返った。




どなたか、いらしてるのかしら……




 自分より高位な神が。
 ならば、自分とて一目挨拶に行かねばなるまい。
 誰にも干渉されたくなくて、自ら閉ざした岩を、少しだけ、開けた。



 笑い声が、聞こえる。
 楽しげな、温かな空気が、流れてくる。

 そして、急にアマテラスの目前に強烈な光が、そしてその光の向こうには………人影。



嗚呼、やはり誰か来ている……



 もうほんの少し、身を乗り出した所でアマテラスは強い力に腕を捕まれ外に引き出された。



「あっ……!」



 ふと、声が止む。
 腕を掴むアマノタヂカラヲが、宴を囲む神々が、皆、皆アマテラスを見ていた。
 アマテラスとアマノタヂカラヲの前に、鏡を持った太玉(フトダマ)が心配そうにアマテラスの様子を伺っている。
 どうやらさっきの光と人影はこの鏡に映ったアマテラスの虚像だったようだ。


「アマテラス…!」

「ウズメ……」



 アメノウズメが服の乱れを直す間もなく駆け寄る。
 息は弾み、汗も滝のように流していた。

 アメノウズメはまだ熱のひかないその手で今だ涙の跡の残るアマテラスの頬を優しく包み込む。



「哀しくて、哀しくて、しかたない事だってありましょう…でも、だけどどうか…」


 そして声を震わせ強くアマテラスを抱きしめた。


「お一人で…泣いたりなさらないで下さいまし…っ!」