スサノヲはその温もりを見失わぬようにと、思わず華奢なその身体を抱きしめた。
 腕の中に納まり切った温もりは、じわりと胸の痛みを和らげた。



「……絶対、護るから」



 涙で僅か震える、しかし確固としたその声に答えるように、その広い背に娘は手を回した。


















 大蛇ヤマタノオロチ退治後、スサノヲはオロチの血で赤く染まった川の辺で一振りの剣を見ていた。

 銘を雨叢雲(アメノムラクモ)。

 切り刻んだオロチの身体から出て来た物であった。




 スサノヲが、親子を救った証ともなる剣。



 高天原があるだろう空は、闇を燃やすかのごとき朱が、姉の照らさぬ空を染めていた。







「姉上……っ」

貴女が見ていたら、貴女は俺を嬉しく思ってくれるだろうか―…





 悲痛にも聞こえる呟きは、頬を伝った一筋の雫とともに落ち、剣を持つ手に僅か力がこもった。