〔ばっ……ちげーよ!〕


 電話ごしにでも、稚尋の焦る表情が見えた気がして、澪は思わず吹き出した。




「ぷ……ははは! 嘘だってぇ!」



〔おまっ……おぼえてろよー!?〕







 楽しくて、仕方なかった。


「でもさー? 思ったんだけど、あたしじゃないとしたら弥生君しかいなくない?」





 あの家に住んでいるのは稚尋の他に弥生君しかいないから。


 多分、そうだと思う。
 弥生君がやったこと。





 だって弥生君はあんなに必死にあたしに話してくれて、言ってたな。




『僕は、兄さんに嫌われてますから』











 あんな切なそうな表情、見たことなかったし。













〔ないだろー!〕



「決めつけちゃだめでしょー? そうかもしれないってだけだし?」



〔でもありえねーだろ……〕



 どうしてそんながっかりな声を出すの?


 そんなに弥生君が嫌いなんだろうか…………











 澪にはキョウダイをここまで嫌う稚尋の気持ちがわからなかった。