「キシキシキシ・・・・・・」と、百葉が笑う。




 赤く輝く眼を甚兵衛に向ける。




 京允とやり合っていた断十郎が、自分の刀に目を落とした。




(こいつを、甚兵衛に渡すか・・・・・・?)




 断十郎は、もう一本、脇差しを持っている。




 しかし、短い脇差しでは、京允の攻撃をさばくのはさらに困難になるだろう。




 今でも既に苦戦しているというのに。




 しかし、断十郎は、意を決し甚兵衛を見る。




「甚兵衛っ!

この刀を使えっ!」




 そう叫び、断十郎は甚兵衛に自身の刀を投げて渡そうとした。




 しかしそこへ、甚だ場の空気を読まない、どこか暢気に聞こえる声が飛んできた。




「あらあらぁ。

刀折れちゃいましたね〜」




 一同の視線が、その人物に集中した。