「少しは元気になったみたいだね」

 あたしの目の前に差し出されたのは水の入ったコップだった。

 あたしはそのコップを受け取る。

「そう?」

 そして、口をつけた。

 冷たいじんわりとした感覚が口の中に広がっていく。

「見たらすぐに分かるって。休息を満喫できたんだ」
 
「そうだね。よかったと思うよ」

 尚志さんの気持ちを知って苦しみは増した。でも、以前の苦しくなる苦しみとは違う。

 自分で決めないといけない。

 そう強く思う苦しみだった。

「本当に彼のことが好きなんだ」

「えっと、あの」

 そういわれると、返答に困る。

「気にしなくていいよ。だって、僕じゃ君はそこまで元気になれなかったから。見ていたら分かる」