「千春とデートしたの?」

 久しぶりに鳴ったあたしの携帯に電話をしてきたのは弘だった。

「デートじゃなくて、一緒に映画を見に行っただけだって」

 どうやら千春を映画に誘って、一緒に見に行ったらしい。

 いつも千春を遠くから見ているだけだった彼にしては随分思い切ったことをしたのだろう。

「よかったね」

 あたしは千春の気持ちも、弘の気持ちも知っているけど何もできなかったのだ。

「お前は大丈夫?」

「なにが?」

「いや、成宮さんが心配していたから」

「大丈夫だよ」

 もう少し前だったら彼に泣き言を言ったりしたのかもしれないけど、今はもう大丈夫だった。

 杉田さんがいてくれるから。