さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 あたしはその脚本を何度も読み返す。千春の伯父さんが書き直したのだろうか。ところどころ現代にアレンジされていて、より共感できるものになっていた。

 あたしはラストに差し掛かったとき、キスシーンがあることに気づいた。

 それは前から知っていたが、まだこのシーンはしっかり残っていたのか。

「そういえば相手役は誰がやるんだろう」

 あたしは尚志さんの顔を思い浮かべていた。

 彼ならいいのに。

 同時に母親にダメだしされた彼が誰かを演じることがないことも分かっていた。

 それでも役の上でも恋人になれたらどんなにいいだろう。

 あたしはそんなことを考えていた。