さよなら、もう一人のわたし (修正前)

 家に帰ると母親は夕食の準備に取り掛かっていた。

 あたしを見ると、「お帰りなさい」と笑顔で告げた。

 彼女はいつでもあたしに悲しい顔さえ見せることもなかった。

「京香がデートをしていた男の人は成宮秀樹の息子さん?」

「違うよ。彼の弟さんの息子さん。甥。で、その隣の女の子があたしの友達の成宮千春さん」

 彼女は目を細める。

 心なしか安堵したように見えた。

「彼女、果歩の主演していた人によく似ているわね。もしかして娘さんなの?」

「よく知っているね。あたし言った?」

「あのときは話題になったからね。映画で人気が出てね、突然消えるように去っていったから」