before kiss, after kiss[短篇]

溜め息をつきたいのを我慢してコップに口をつけたら、不意に押見が笑いを零して言う。



「かいちょーも俺のこと如何にも不良の代表って目で見てるでしょ?」



その声には別段どんな感情もこもっていなくて。


寂しそうでも侘しそうでもなかったから、コップを置いてから笑い返す。



「真偽が如何であれ、飲酒喫煙女遊びは噂に聞くから」

「ひどいなー、俺酒も飲まないし煙草も吸わないのにー」

「ああ、女は否定しないのね」

「えーだって健全な十七歳の男子こーこーせーだもん。気持ちいいことしたくなるじゃーん」



間延びしていく声が耳を通り脳をかき交ぜていく。


いい加減普通に喋ってくれ、と思っていると押見の左手が私の腕に近づいた。


触れそうで触れない距離、テーブルの上に無造作に置かれる男の手。



「かいちょーが相手してくれるんならもうしないよ?」

「お断り。したいんなら勝手に女遊びしてらいいし、誰も咎めないわよ」

「つめたー。人の告白をそんな無下に扱う?」


「今の告白だったの」そう私が口を開く前に、押見の手が私の腕を掴んだ。



「例えばここで押し倒すことだって出来るけど」



そしてそう嘯(うそぶ)く。


お世辞にも綺麗だと言えないラーメン屋の床でやれるんなら、やってみろという感じだけれど。


「立ったままでも出来るじゃん」とか言われそうな気がするので、黙っておく。